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楽譜を修理しました。

知人からの依頼で、サティの楽譜を修理しました。

もともと彼のお母様のもので、
かなり古い楽譜です。
思い出の品だそうで、
装丁などはできる限り現状維持で修理してほしいとのこと。
楽譜を修理しました。_a0330267_17202180.jpg
もとの綴じはホチキス止めの中綴じ。
ホチキスは錆びて、中ほどのページは
何枚か中央で破れています。
表紙も背中で破れています。
表紙の中央部も破れあり。角にも欠損があります。
破れはセロテープや梱包用の透明テープで貼ってありますが、
セロテープは劣化して、はがれているものも多い。
テープの劣化の為、紙には茶色い染みができています。

途中経過の写真があまりないのですが、
まずは、テープ類、ホチキスをはずして、解体します。
テープは、アイロンを当てると意外に簡単に剥がれました。
表紙もつるっとした紙なので、紙を剥がさずに、
テープのみ、綺麗に剥がすことができました。

中央で破れている紙は、和紙で継ぎます。
楽譜を修理しました。_a0330267_17265932.jpg

折れている上部の角の紙は、
少し湿らせ→アイロン、を繰り返し、平らにのばします。

表紙は裏打ちしようかと思ったのですが、
紙がもろくて、水にとても弱そうだったので、
破れている部分のみ、内側に和紙を貼ったり、
デンプン糊を入れたりして補強しました。

装丁がコーネル装を模して、
背と角が黒くなっていたので、
欠けていた表紙角には黒の和紙を入れたりして補強します。

中身は麻糸で中綴じ(ミシン綴じ)しました。
楽譜なので、どのページでもしっかりと開くような綴じを選びました。
中身を綴じるとき、寒冷紗も一緒に綴じます。
これでより丈夫になります。
楽譜を修理しました。_a0330267_17240208.jpg
中身と共に綴じた寒冷紗を表紙に貼り、合体させます。
表紙と中身を、さらに(見返し的に)細い和紙で継ぐという方法も
ありますが、いったん、これで様子を見ようと思います。
楽譜を修理しました。_a0330267_17250337.jpg
表紙の、色が剥げているところを、
不自然でない程度に色を補い、完成です。

(内容保護のため、中身にはティッシュをかぶせて撮影しています。)

しっかりと補強され、再び使用してもらえる楽譜に生まれ変わりました。
楽譜を修理しました。_a0330267_17252307.jpg
綺麗な楽譜がほしいなら、新しい物を買った方が絶対に安いと思います。

しかし、もう手に入らない古いものや、
ご家族の思い出のつまったものは、買う事はできません。
放っておいたら、劣化していってしまう大切な本や楽譜、
すこし手を入れれば、長持ちさせることが可能です。

大切な本を、ずっとずっと、大切にしていただけますように。

★絵本、経典の修理など行っています。
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by kouboudaidai | 2020-05-28 05:50 | 本を繕う

製本、本の修理、豆本作り、絵本作り、絵本の読み聞かせなど、本まわりのことをいろいろやっています。


by さえ